築地市場へご案内!

2018年10月11日、豊洲市場がオープンして築地は83年にわたる歴史に幕を下ろしました。かつての築地を思い起こすべく、この記事はそのまま残しておきたいと思います。


華のお江戸の台所、それが築地市場です。

プロの間で「河岸」といえば、それは築地市場のことです。良くテレビで年末になると紹介されるのはいわゆる「場外」の方、こちらに行ったことのある方は多いかも知れません。ですが「場内」のほうはこれまで「素人さんお断り」の場所とされ、一般の人が買い物をすることは出来ないと言われておりました。

でも、もう違います。
カメラを構えた外国からの観光客もいれば、どう見てもプロではない奥様がマグロのあらを買っていたり・・昔と違って素人が少量の買い物をしてもいやがられることはありません。皆さん、是非「場内」を経験してみてください。

とは言っても、やはり「場内」はプロとプロの仕事場、そこに部外者がお邪魔するにはやはりそれ相応のマナーが必要だと思います。
まずは時間帯ですが、プロが仕入れをするのは早朝からまあ8時くらいまでが中心。ですから8時過ぎから10時頃の間が私達素人が比較的お邪魔をせずに買い物が出来る時間であると言えましょう。

次はスタイル。床は濡れていて滑りやすいですし、水溜まりがありますから足下は長靴が一番です。そして台を洗う水や生け簀の水が跳ねることもありますし魚の鱗が付いてもいいような服装にしましょう。また、ハンドバッグなんぞは狭い通路を歩くときにトロ箱に引っかかったりして邪魔になりますから、腕に下げたりしないで胸に抱きかかえてくださいね。できればお財布や携帯電話などはウエストポーチに入れておくのが一番なのです。
これであとは手ぬぐいを首に巻き、籐で編んだ仕入れかごを持てば少なくとも外観は「プロ」の域に達しています。まあ、籐のかごは別としてアイスノンを入れたソフトクーラーバッグを持っていくといいですね。

最後に、場内に入ったらもう荷車や台車(丸い形をしてハンドルが上に付いた牽引車をターレットまたは略してターレと呼びます)がびゅんびゅん走り回っています。常に回りに目配りをして、それらにぶつからないようにしましょう。また、横の通路は特に狭いですから、複数で行ったときは一列になるとか分かれるなどして自分たちで話に夢中になって立ち止まって他の人の通行を妨げないように注意してください。

では、まず築地に行きましょう。地下鉄ならば日比谷線の「築地」下車。車のときは本願寺の裏の地域のコインパーキングを探しましょう。市場の駐車場もあるのですが、朝10時くらいまでは許可証を持ったプロ専用となっていて、一般車は入ることが出来ません。
さて、築地5丁目の交差点から波除神社方向に向かいます。ここでちょっとお詣りしてみましょうかね。ここは「災難を除き、波を乗り切る」 稲荷様として、災難除・厄除・商売繁盛・工事安全の神様だそうです。興味深いのは境内にあるいろいろな塚です。築地に関係が深い業界が、それぞれ商売に使う素材を祭っているのです。


波除神社の本殿でお詣りをします

お歯黒獅子です。

もう一匹の黒い獅子です。

さすが築地、玉子屋さんがありますからね。

寿司塚です。

これは海老塚ですよ。

さらにはあんこう塚に活魚塚もありました!

さて、神社をでたら左方向へ。すぐに橋があってそこから鰹節の良い香りが漂ってきませんか?削り立てのふわっとした鰹節を見るだけで料理を作りたくなりますね。ぜひ、鰹節も買ってお帰りください。そうそう、秋になると鰹節屋さんの向かいの八百屋さんでは輸入のマツタケがビックリするような値段で売られていますのでお買い得ですよ。あ、それから、その先にある「えび金」ではエビの出汁が効いたラーメンが食べられます。これ、珍しい上に美味しいですよ。おススメです。


赤いテントが目立ちます。

おすすめは海老そばです。

海老の美味しそうな香りが立ち上ります。まずはスープを一口、どうぞ。

この麺にも海老が練りこまれているのだそうですよ。しゃきっとしています。

おっと、すっかり話がそれてしまいました。神社から左にある橋の、その向こうに青い屋根が見えますね。そこがもう「場内」なのです。
左前方に白い壁の「氷や」さんがありますので、そちらに向かうと大屋根のしたに「第7大通路」がありますからそこを入ってください。右側はトラックがずらりと並んでいますがその反対側、左の壁の向こうにお店が並んでいます。
縦のやや広い通路と横の細い通路が見えるはずです。実際に買い物をするときは横の通路を入って両側のお店ですることになります。


波除神社の向こうに市場の青い屋根が見える

橋を渡るともうそこは市場。周囲に注意!

正面の氷屋の左、大屋根を目指して進む。

ここが第7大通路、店は右側に入ったところ。

縦の通路で奥に向かう。

横の通路の両側がお店。

さあ、いかがですか?
信じられないほどの魚、貝、加工品の山ではありませんか?
金額の単位は基本的に1Kgあたりの単価であり、パックになった物では一個の値段がつけられています。お店によって100円から200円くらいの差がありますからまずは一通り見て回って相場を頭に入れましょう。

ですが、ここではお店の高い安い値段の差は僅かで、品物の良さで値段が大きく違うことに気づくでしょう。
例えばウニ、同じ一折りでも7-800円の安い物はアメリカ産、1000円台が中国産、そして4000円とか6000円等という値が付いている物は北海道は利尻や礼文産の1級品というように、物によって2倍から3倍違うのはザラと思ってください。したがってここで買い物をするときには、自分の欲しい物は何かある程度考えておいてから買い物をしないと「分不相応」とまでは言いませんが、必要以上に高価な物を買ってしまうことにもなりかねません。
そう、「築地は安い!」というイメージは間違いなのです。正しくは「築地では払った額に見合う物が買える」というべきでしょう!ヒラメを例に取ると、売れ残って鮮度が今ひとつのものあれば、今締めたばかりの養殖物も天然物もある。近所のスーパーでもデパートの地下でもヒラメはあっても1種類だけですが、築地ならなんでも望みのレベルのものが手に入ります。そういう、普通の魚屋では扱っていない種類とレベルの食材を手に入れるために行くべきところなのですね、築地は・・。

さて、めぼしい物を見つけたとしましょう。
プロの人は、自分でトロ箱(発泡スチロールのケースのこと)に手を突っ込んで欲しい物だけを選んで店の人に渡しますが、これは店とも馴染みになっているから出来ること、我々はなるべく指をさしてお店の人に選んでもらいましょう。ましてや買うわけでもないのに「わあ〜、これ生きてる!」などと騒ぎながら商品をツンツンするのは止めてくださいね。すべて売り物であって、築地では生きていない方が珍しい位なのですから・・。

そして、店の人が重さを量って「XXXX円!」と言ったら、その人にお金を渡すのではなく店の奥にある帳場に行って代金を払います。明細を書いた伝票をもらって店先に戻ると、「さっきの店員が居ない!」ことがありますが、心配要りません。きっとその辺にビニール袋に入った商品が置いてあるはずです。一応中を確認してから持って帰りましょう。


両側には、様々なお店がずらりと並ぶ

通路にはみ出す、トロ箱・・

何がよさそうかな?

こちらは貝類の専門店です。

締めたばかりの活魚。ピクピク動いています。

見事なボタンエビ。価格は基本的にKgあたり。

ウニ、ウニ・・奥に行くほど上物で高価になる。

冷凍のマグロ!

「1.2キロで1560円だね!」

お金は奥にある帳場で支払います。

外に出てきました。

場内を自在に走るターレット。公道も走る。

発泡スチロールの山!場内で処理される。

はい、お疲れ様でした。

さて、これで買い物も終了です。
遅い時間とはいえ、まだまだ場内はごった返しています。ふと振り返ると発泡スチロールの山がありました。全国から魚も集まりますが、みなこういう発泡スチロールに入ってきますから一日に捨てられる箱の量もすごいものです。聞けばここには自前の処理施設があるそうです。さすがですね。

いかがでしょう、「場内」ならではの活気というか熱気を感じていただけましたでしょうか?

え、サカナを見ていたらお腹が空いた・・それは無理もないですね。
それでは場外にもたくさん店はありますが、外に出る前に良いところがあります!
第七大通路を出たら、交番の前の橋を渡らずに左に向かって歩いていってください。台所用具を売っている店の先に食堂が並んでいます。奥の方には「吉野屋」もありますよ。ここが第1号店で、アメリカ牛の輸入禁止でほかでは豚丼に変えたのですがここではちゃんと国産牛を使った牛丼を出しているそうです。勿論、値段は前と同じではありません。
で、その手前の黄色い看板「豊ちゃん」に注目。ここも河岸で働く人や買いに来る人に人気のお店です。おすすめは「オムハヤシ」オムライスにハヤシのルーをかけたものです。(今は閉店して寿司屋に代わりました)
トロトロの卵がお好きですか?でしたら「鳥藤」に行きましょう。場外と場内に2店舗あります。ここの親子丼は絶品です。しかも普通の親子も美味しいですが、ぜひ「塩親子」や「カレー親子」もお試しください。場外と来たら、「若葉」のラーメンも捨てがたいですね。昔ながらのさっぱり東京ラーメンですが、これがまたしみじみ美味いんです。


豊ちゃんはこの看板が目印。

これがオムハヤシ、オムカレーもあります。

鳥籐に行列ができています。

「鮨分」は早めに閉店して豊洲に移動です。

これが一押しの「鳥藤」の親子丼です。このトロトロ!具合をご覧ください。

塩味の親子丼です。これもウマイ!!

カレー親子です。ダブルの美味しさ!

これが場内店だけの親子丼塩2号です。

ここが若葉。いつもすごい混雑です。

懐かしい東京ラーメンです。

「やっぱり築地に来たら寿司!」というあなた、それでは先ほどの場内は吉野屋のさらに左に進んで路地を入ってください。あたり一面に「魚がし横丁」の旗が下がっていますでしょう?そのあたり全部、定食屋さんに寿司屋さんが軒を連ねています。もともと河岸で働く人達の食事所だったのですが、いまではお任せで1人前3000円以上もする寿司屋さんの前にガイドブック片手の観光客が列を作って待っています。特に土曜日は、店の前に並びきれなくて建物の手前に別の列を作って並んでいますので、覚悟してお出かけください。

さて、「魚がし横丁」には食堂以外にも調理用具を売る店、刺身のツマや飾りに使われるものを扱うお店などがあります。お土産屋さんもあって、魚の名前が書かれたTシャツなど見て歩くだけでも楽しいです。
また場内の必需品である長靴も売っています。よく料理人が履いている白い長靴もここならありますね。特にここで有名なのは「ウロコの長靴」です。魚のうろこではなく「伊藤ウロコ」というメーカーの長靴は魚河岸のプロが認める一級品。丈夫で履きやすく、油でも滑りにくいのです。白い逆三角形のマークがそのブランド品の目印です。河岸でこの長靴を履いている人をみかけたら、かなりのプロであるといえましょう。
調理用具と言えば、包丁で有名な京都「有次」のお店も魚河岸横丁の一角にあります。支店ではなくのれんわけだそうですが、扱っている品物に間違いはありません。


「有次」で購入した出刃包丁。私は左利きなので刃が逆側についています。そのためお値段が右利き用の5割り増し。

そうそう、せっかくですから卵焼きも買って帰りませんか?
食堂の並びに何軒もありますが、私の好みは「大定」ですね。魚河岸横丁の7号館の北端にあります。私がいつも買うのは「つきじ野」という寿司屋さん向けの商品です。最近は観光客用に味見として串に刺した食べ歩きできる商品も人気があるようです。

さて、お腹もイッパイ、買う物買って満足満足・・・。
ずっしりと重くなったクーラーバッグを担ぎ直して、足取りも軽く(ついでに財布も軽く)帰宅するとしましょう。
おっと、あわてて車にぶつからないようにしましょう!

では、お疲れさまでした。また来週〜!

追記:築地市場は日曜祭日の他、不定期に水曜に休みがあります。市場のホームページをご覧ください。

http://www.tsukiji.or.jp/

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