投射スクリーン編
Screens


*初代のスクリーン

最初のスクリーンは、液晶プロジェクターとセットで購入したSHARPのXU-HG80Cという80インチのパールタイプのスプリングローラー式スクリーンでした。
そのころは既に輸入品ではスチュワートもありましたし、キクチやOSもありましたがプロジェクターとの相性が考慮されているだろうということと価格(専らこちらが重要)から素直に同じメーカーの品を選んだわけです。

6畳二間を通しにした部屋の、ベランダへの出入り口の前にスピーカーが置いてありましたので、必然的にスクリーンの設置場所もその出入り口の前になります。スピーカーを少し前に出し、スピーカーとTVの後に下がるようにコンクリートの梁にアンカーを打って固定しました。
梁がかなり下がっているため、投射した画像の下の左右はスピーカーにかかってしまいますが、仕方がありません。
当初は、映画を見るたびにプロジェクターをサイドボードから引っ張り出し、ワゴンに乗せてセットしていましたのでその時に手でスクリーンを引き下ろしておりました。


<電動化その1>

構造を調べてみると、アルミのロールにシャフトが左右出ていますが片方は断面が角形になっており、ケースのカバーの受ける穴も角形ですからスクリーンを出し入れしてもこちらのシャフトは回りません。そして、このシャフトにはコイル状のスプリングが固定されていてスプリングのもう一端はアルミのロールに固定されています。

つまり、スクリーンが引き出されるとロールが回転しスプリングを絞っていくわけで、この反発力が戻すときの巻き上げ力になります。
この力は角形のシャフトを回して位置を変えることによって増減しますので、ある程度ゆるめていけば丁度スクリーンの重さと釣り合って下がりも上がりもしない状態にすることが出来ます。

もう一方のシャフトは丸棒で、こちらはロールにつながっていますのでスクリーンの出し入れによって回転します。これを何らかの方法で回してやれば電動化できることがわかりました。
ただ、シャフトは外側のカバーから5ミリくらいしか頭が出ていません。これではシャフトをくわえてモーターに連結することが出来ないので、カバーを外してスペーサーを取り除き、ハンマーで少しずつくぼませることで1センチくらいまでシャフトが突き出すようにすることが出来ました。

駆動するモーターには、当初ステップモーターを直結にしてパルスを適当にすることでじわーっと降りてくるように考えたのですが、いくつか試したモーターではトルクが不足してものになりませんでした。最終的には秋葉原のジャンクショップで見つけたDC12Vのギヤ付きモーターがトルクも十分あり回転数も適当なので、これを使うことにしました。
一つの問題は両者のシャフトの径が違うことで、これは中間に昔のラジオのバリコンに使用したジョイント(真ん中に陶器の円盤があって左右の軸のずれを吸収するユニバーサルジョイント)の一方を削ってシャフトにあわせることで解決しました。これにACアダプターとモーメンタリーのトグルスイッチを組み合わせてテストし、最適なスプリングのバランス位置を見つけて完成です。

早速取り付けてみましたが、モーターの音が少々大きく品がない事、降りるときと巻き上げるときの早さが違うことなど、難はありますが格安でスプリングローラーの電動化ができました。

<電動化その2>

スクリーンが電動化できたら、今度はリモコンで操作できるようにしたいところです。
こちらは比較的容易に解決しました。キットになっている赤外線リモコンとリレーで組んでもいいのですが、AVシステムの構成がソニーの555ESというAVセレクターとヤマハのDSP-2000の組み合わせで、音量はヤマハでコントロールしていましたのでソニーのボリウムは使っていません。このボリウムがよくある電子ボリウムではなく、基盤状のボリウムをモーターで駆動していましたのでリモコンのアップ/ダウンに応じてモーターに正転/逆転の電圧がかかります。ただ電圧も電流も低いので直接スクリーンのモーターを動かすのではなく、ダイオードで整流回路を作って2個のリレーを使って12V電源でスクリーンのモーターを動かすことにしました。

<逆巻き逆回転の技>

その後マンションを引っ越しましたが、相変わらず改造電動リモコンスクリーンは活躍しておりました。途中2-3回、シャフトのジョイントのネジがゆるんで空回りしたり、カプラーが壊れて交換したりと言った故障はありましたが・・・。

ところが、今まで使用していたモニターTVをプラズマにしたときに問題が発生しました。
すなわちスクリーンは壁にかけた時計や絵の前に降りてくるよう5センチほど壁から離れて降りてきていたのですが、プラズマを壁掛けにすると本体の厚さ10センチ+マウント3センチで15センチは壁から離さなければなりません。

ところが、スクリーンは梁に下から固定してあるとは言っても手前にフロントエフェクトスピーカーパネル兼用のスクリーンボックスが出来ています。従ってスクリーン全体を前に出す余地はありません。

そこで手前にバーを設置してスクリーンがバーを乗り越えて前に降りてくるようにすることを考えました。結果は失敗。バーの抵抗が大きくスクリーンを降ろすのはともかく巻き上げるのにモーターのトルクが足りません。またいちいち降ろすたびに下端を手前に引いてやらなければならない上、見栄えも今一です。スクリーンの裏がバーとこすれる音も結構大きくて、バーにベアリングでも入れて回転ローラーにしなければならず、大がかりな仕掛けになってリビングには相応しくありません。

そこでひらめいたのがロールの直径を利用してスクリーンをロールの手前に降ろすことです。直径が約8センチくらいありますからなんとかプラズマの前にスクリーンを降ろすことが出来そうです。
早速また分解して、まずはコイルスプリングを逆巻きにしても大丈夫か調べました。今までのように巻き絞りだとコイルの径が小さくなりますが、今度は逆に筒の中で広がるわけです。カレンダーを丸めて筒に入れる時のことを考えれば理解できるでしょう。最悪筒の内側につっかえて回らなくおそれがありましたが、結果は問題ない事がわかりました。

そうとわかれば次はスクリーンを裏表逆に貼ることですが、なんとロールには一巻き目の重なりの段差を吸収するために段がつけられているのです、丁度断面がカタツムリの殻のように!そこでコイルスプリングとシャフトをアルミロールから抜き取って左右入れ替える必要がありました。そのうえでスクリーンの貼り直し。今までの投影面が内巻きなのにたいし外に来るので傷を付けないように注意しなければなりません。もちろんスプリングなどメカ部分はグリースがべった
りですので、汚れた手で作業は出来ません。

貼り直しが出来れば、組み立てて、スプリングのテンションを調整し、電源の極性を変えてやれば終了です。大変な作業ですが、結果は満足のいくものでした。
ただ、下のおもりのバーがプラズマの縁にコツンと当たるので一部にフェルトを貼って音止めと傷防止としました。


*二代目のスクリーン

<またしても逆巻き逆回転の技>

SHARPの80インチスクリーンは当時としては当然のことながら4:3です。
それがDVDやBSデジタル放送の普及により16:9画像が多くなってきました。
そこでスクリーンも新しくすることにして適当なものを物色。そこで見つけたのがピュアビジョンのスクリーンです。

サイズはスクリーンボックスの幅いっぱいの180センチとし、早速発注しました。
このスクリーンは表がホワイト、裏がグレーとなっており液晶プロジェクターの黒浮きや周囲の白っぽい壁紙からの反射を考えるとグレー面を使用したいところです。
さて標準仕様は、ロールの内側がホワイト、モーターは正面から見て右に付いています。つまりSHARPのスクリーンと同じ構成です。
メーカーではグレー面を使うときは左右をひっくり返して使えと言っていますが、スクリーンボックスの寸法とスピーカーやプロジェクターとの位置関係でモーターを左に持っていく事は出来ません。
なおかつ、壁との距離をとるためにはロールの外巻き面を手前に持ってこなければなりません。

ということは、モーターとロールの位置関係はそのままでいっぱいにスクリーンを降ろし表と裏を入れ替え、さらに同じ方向に巻き続けてグレー面を外側のまま巻き上げた状態を作り出せばいいわけです。それならば、既に経験がありますので難しくはないでしょう。

真左:スクリーンボックスの様子。
フロントエフェクトとセンタースピーカーが見える。
ロールはグレー面が外側に巻かれていることがわかる。
一番手前がの白い箱がモーター。

ところでこのスクリーンは電動ですが下げていくとプリセットした位置で自動的に止まるように、また巻き上げた位置で磁石とリードスイッチでリミッターを構成しています。
そこでメーカーにモーターの種類や逆転の方法、プリセットのセッティングはパルスカウントかなどいくつかの技術上の質問をしましたが、回答は得られませんでした。
このメーカーは元々生地が専門なので、電子回路は他から供給を受けているのでわからないのではないかと考えました。

そこでまた分解です。
まず、モーターはAC100Vの交流モーターでステーターコイルが2系統あり、3本のリード線の内1本はコモンですから他の2本を入れ替えることで逆転できることがわかりました。
またプリセットもモーターの回転方向に関係がないこともわかりましたし、リミット機構は基台の中にある基盤を取り出せば自由に位置を決められることも確認しました。

これで制御関係の問題は解決したので、あとは単純なメカ改造作業です。
ロールからスクリーンを外し、ホワイト面でロールに接着します。
バランス用のスプリングを緩めてから逆に巻き上げます。これはSHARPに較べてマイナスドライバーでシャフトを押し込みながら回して調節できるので非常に楽でした。
後は組み立てて、適当な位置にリードスイッチの基盤を固定すればオーケーです。
リモコンはアップとダウンのボタンが逆になりますが、どうせ別のラーニングリモコンに記憶させて使うので問題になりません。

メーカーとしては勝手に改造されておもしろくないかもしれませんが、基本的なパーツは優れており運転音が静かなこと、スピードが丁度良いこと、セットした位置にぴたりと止まることなど完璧に希望通りのスクリーンになりました。今ではプログラマブルリモコンによりボタン一つでプロジェクターがオンになり、スクリーンがしずしずと降りてくるのでとても満足です。 

写真左:スクリーンを上げた状態。           写真右:スクリーンを降ろした状態 

 =この項終わり

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