兵隊さんの運動会を見に行こう!
ひょんなことから「総火演に行きませんか」とお誘いがありました。
通常、「そうかえん」と略されて呼ばれるようですが、正式名称は「富士総合火力演習」と言います。静岡県御殿場市の東富士演習場で実施される陸上自衛隊の演習の一部で、戦車やヘリコプター、さまざまな火砲などによる実弾射撃を間近に見る事ができます。
この演習は陸上自衛隊が行うイベントの中では最も人気があり、一般公開の入場券は抽選の倍率が高くて滅多に手に入らないと聞いています。今回、自衛隊関係者のつてでチケットが手に入ったとのことで、知人がそれをプレゼントしてくれるというのです。これは楽しみですね、行きましょ、行きましょ!
<陸上自衛隊HPの総火演ポスター>
さて、いただいたチケットには8月18日(火)10:00〜12:00と書いてあります。実はこの演習、23日一回きりではなく、同じことを3回くらいやるようなのです。それぞれ自衛隊関係者のためであったり地元住民のためであったりそして23日がは本当の一般市民とか招待者のための演習というわけですね。そもそもこの演習はいろいろな場面に対応すべく一か月くらいかけて行われるものですが、ほとんどが非公開、総まとめだけをこうして公開しているようです。
さてこのチケットには駐車券がついています。案内図によると、御殿場インターから23号線を登って滝ヶ原駐屯地のようです。そこからシャトルバスで演習場の外縁の道路を10分くらい走ったところが演習の観覧席らしいです。
当日、朝食を済ませてから東京を朝7時に出発しました。町田のあたりでちょっと渋滞しましたが、8時半過ぎには御殿場インターを出ることができました。そこから地図を見ながら、途中コンビニで飲み物を買ってトイレを済ませてから23号線を登っていくと、やがて交通整理の自衛官の姿が見えてスムーズに駐車場に誘導されました。駐車場の端には富士急の観光バスが止まっていて、なるほど、これがシャトルバスなんですね。
23号線に乗ってすぐ、「キャンプ富士」という文字が見えました。いえ、キャンプ場ではありません。英語の表記があちこちに見える、在日米軍の基地なんですね。お、小さいながら管制塔と滑走路もありますよ。
さて10分ほど走って会場そばのバス駐車場に到着。そこからぞろぞろと人の列にしたがって砂利道を登ります。周りには観光バスで来たらしい一団が「厚木自衛隊友の会」などの旗をかかげています。そうか、「演習」の予行演習だから、一回目はなにか失敗があっても許される「身内」への披露としてあるわけね。10分ほど歩いたら観覧スタンドが見えてきました。スタンドの下には弁当を売る店のほか、戦車饅頭や煎餅、プラモデル、Tシャツ、タオルなどさまざまな自衛隊グッズが並んでいます。さすがは「身内」の集まり、どのお店も客が一杯ですね。
私のチケットはEスタンドまたはシート席となっています。スタンドはイス席なのですが、私たちが到着した9時40分にはすでに全部埋まっていました。そこでその前に敷かれたブルーシートならぬ迷彩色のシートの上に座ります。Eの場所はかなり右側で、演習する車両は良く見えたのですが解説のモニタースクリーンが左端にしかなくて遠いためにほとんど見えませんでした。スクリーンは両側に設営して欲しかったですね。
さて、10時になって演習開始。
演習は2部構成で、「前段」では陸上自衛隊が誇る各種装備の紹介をして、「後段」が実際の戦闘における各装備の連携プレーを見せてくれる、となっています。私には戦車と言えば昔プラモデルを作った61式戦車がわかるだけでほかの車両もヘリの区別もつきませんが、どういう武器/テクノロジーが導入されているかはトム・クランシーの小説で理解しています。つまり何式戦車かはわかりませんが、それらが戦車間情報通信システムを使って全戦車が味方と敵の位置情報を共有しているだろう、くらいの想像はできるのです。
それでは、まずはどんな装備があるのか見せてもらいましょう。
1. 前段 10:00〜11:00
前段演習では、陸上自衛隊の火力を主要装備ごとに遠距離火力、中距離火力、近距離火力、ヘリコプター火力、対空火力及び戦車火力について実弾を用いて紹介してくれるとのことです。
スタンドの下にはたくさんの店が出ています。
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結構若い人が多いですね。
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スタンド前の地面に敷いたシートに座ります。
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富士山には雲がかかっています。
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開始の時には富士山がその姿を現しました。緑の丘に見えるのは目標です。 |
演習の始まりです。特火部隊が入場してきました。 |
砲撃開始です。なかなかすごい音がします。
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「ダンチャ〜ク、今!」 灰色の煙は砲弾の弾着地点です。
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今発射したのは左の203ミリ自走榴弾砲です。
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1:155ミリ榴弾砲FH-70 2:203ミリ自走榴弾砲 3:99式155ミリ自走榴弾砲
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FH-70榴弾砲10門による大隊射撃です。見事な同時弾着です。 |
位置も種類も違う火砲が一斉に火を吹きます。 |
空中で同時に爆発して富士山を描きました。 |
普通科部隊の迫撃砲小隊は4名で1門を担当。81ミリ(左の2門)と、120ミリ(右)迫撃砲を使用します。 |
普通科部隊の兵士が乗ってきたのが、96式装輪装甲車。10名乗車できて12.7ミリ重機関銃を装備。 |
小銃小隊が近接戦を開始しました。小銃、機関銃、無反動砲を使用します。 |
84ミリ無反動砲による発煙弾の射撃です。 |
ヘリのローター音が会場に響きます。 |
攻撃ヘリコプターが登場しました。 |
「コブラ」と呼ばれるAH-1S対地・対戦車攻撃ヘリコプターで、対戦車ミサイルを発射します。 |
これは「アパッチ」ことAH-64D。30ミリ機関砲で地上の敵を征圧します。発砲煙が下に流れていきます。 |
ローターの上の丸いものはレーダードームでしょうか。 |
87式自走高射機関砲です。74式戦車に対空火器を搭載したもので航空機を迎撃します。 |
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出ました74式戦車!いつみてもかっこいいと思います。 |
現役では一番古いモデルですが、国産2号機としてまだ300両くらい活躍中だそうです。 |
いかにも戦車というデザインですね。個人的には一番好きなモデルです。 |
次の戦車がやってきました。 |
急停止でノーズダイブしても砲身は下を向きません。 |
90式戦車です。砲身安定装置によって走行中でも砲撃が出来るそうです。 |
偶然、砲撃の瞬間を写すことが出来ました。ものすごい音です。 |
観客の皆さんも思わず耳を押さえています。 |
最後に登場したのは、10(ヒトマル)式戦車です。 |
90式に比べると、とても軽快な感じがしますね。 |
ふう・・・大砲の音は真下で聞く花火の音くらいですが、戦車の砲声はすごいですね。まさに暴力的というか、破裂音というか本当にジーンと耳鳴りがするレベルでした。
さて、ここで20分の休憩です。休憩のあとは後段の作戦シミュレーションを見学します。
2. 後段 11:20〜12:00
後段演習では、仮想的国軍が日本の領土である島を占領したという想定のもと、「部隊配置」「機動展開」「奪回」の作戦をシミュレーションするそうです。ただ、敵艦船への攻撃や戦闘機による攻撃の部分はモニタで説明され、私たちが見たのはそのあとの偵察班や普通科部隊の送り込み、戦車による敵陣地の攻撃でした。
富士山に傘雲がかかりました。
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まずは偵察ヘリが敵の有無を確認します。
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偵察班を乗せたヘリが着陸します。 |
これは多用途ヘリコプターUH-1です。 |
ヘリにはオートバイが2台搭載されていました。 |
オートバイを使った偵察班が進行して、ヘリが離脱します。 |
次に対地攻撃ヘリ部隊がやってきました。「地獄の黙示録」みたい・・・ |
先遣隊が着陸する地点の安全を確保するのが目的です。 |
AH-64が援護射撃をする中、輸送ヘリが着陸します。
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CH-47チヌークです。後部が開きました。
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高機動車が機内から出てきました。
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先遣戦闘中隊が奥地に進行していきます。
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チヌークが離脱します。 |
こうして普通科部隊が奥地に進行するわけです。 |
74式戦車が進行してきました。赤い旗は発砲準備が完了したことを示します。 |
2台とも射撃位置に着きました。 |
1発目の砲撃です。右側の戦車の発射の瞬間です。 |
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続いてもう一台の2発目の砲撃。砲弾の光跡が見事に写っています。 |
そして火炎が広がり・・・・ |
砲身からガスが噴出して・・・ |
火炎を吹き飛ばします。 |
命中!! |
では、2台の射撃の模様を動画でご覧ください。(写真をクリックすると別画面で開きます。) |
こちらからは10式戦車がやってきました。 |
何と、走行しながら砲撃を始めました。 |
砲撃後、急停止して一気にバックします。エンジンがうなりをあげています。 |
一気に100メートルくらいバックして次の攻撃態勢をとって警戒します。 |
一瞬の後、前進しながら散開して位置につきます。 |
では、この模様を動画でご覧ください。(写真をクリックすると別画面で開きます。) |
再び射撃位置に着きました。 |
敵戦車を見つけて攻撃します。
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これだけ並ぶと壮観ですね! |
さらに攻撃を続行します。 |
自軍を隠す煙幕をはりました。そろそろフィナーレです。 |
攻撃ヘリコプターが上空から安全かどうか確認し、残っている敵がいれば掃討します。 |
脅威は取り除かれて奪還完了しました。作戦成功です。 |
う〜ん、演習が終了してもすぐには立ち上がれませんでした。
耳がグワァ〜ンとして、音だけでどっと疲れた感じです。冷たいお茶をぐっと飲んで、さて、帰るとしましょう。このあと戦車などの展示があって記念写真を撮ったり車体に触ったり出来るそうですが、お腹もすきましたしそれほど戦車に思いいれがあるわけではないのでスタンド裏に向かいます。
むむ、すごい人ですね。バスの駐車場に向かう道がたくさんの人で渋滞しています。結局12時ちょっとすぎに演習が終わってからバスに乗ったのは1時半でした。駐車場から自分の車に乗って御殿場の街をくだります。さて、お昼は何を食べよう?
注)総火演のビデオ映像が防衛省のホームページで紹介されていますが、これは8月23日(日)の一般および政府関係者向けの演習の模様です。私が見たのは18日のもので、内容が若干異なっています。防衛大臣の挨拶はありませんでしたし、使われた車両や装備にも違いがあります。
http://www.mod.go.jp/gsdf/event/fire_power/fire_power_27.html
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