船舶に使用されているバッテリーは、「鉛バッテリー」です。
これはその構造として、プラスの極板(陽極板)として二酸化鉛を、マイナス側にはスポンジ状にした鉛の極板(陰極板)をセパレータという絶縁シートを介してサンドイッチにしているからです。2枚の極板は、比重1.280(1.260)の希硫酸を使用したバッテリー液の中で化学反応により電気を発生します。鉛バッテリー1個の起電力は約2.1ボルトで、この電池を6個直列に接続して12ボルトの電圧を得ています。
鉛バッテリーは、使用目的から「スターターバッテリー」と「ディープサイクルバッテリー」に分けられ、一方、電極板の種類によって「カルシウムバッテリー」、「ハイブリッドバッテリー」、「アンチモンバッテリー」などに分けられます。
「スターターバッテリー」はその名のとおり、エンジン始動用で短時間にハイパワーを出すことが出来るよう電極板の厚さは薄いものを使用して数を多くしてありますが、深い放電の繰り返しには適しません。
逆に「ディープサイクルバッテリー」は深い放電、充電の繰り返しに耐えるバッテリーで電極板の枚数は少ないのですが厚さが厚い構造になっており、一気に大電流を流す用途には適さないのです。
100メートル走の選手とマラソンランナーの体の鍛え方の違いみたいなものですね。
体力といえば、バッテリーではその容量の選択が重要になります。
容量、つまりバッテリーがどのくらい電気を供給できるかを表す単位ですが、これには2つの計り方があります。
日本でよく使われているのがアンペア・アワー(Ah)ですね。
これは、放電中の電解液温度が25℃+-2℃において20時間後にバッテリーが10.5Vとなる放電電流=20時間率電流と時間の積で表します。 つまり50Ahのバッテリーなら2.5Aを20時間流せる、あるいは5Aなら10時間流せる容量というわけです。ただし実際のバッテリーは、一度に多くの電流を流す必ずしも計算どおりにはならず、50Ahで10A流すと8割位に減ってしまうようです。少電流をちびちび流す方がいいというのは乾電池と同じですね。
もうひとつはアメリカや欧州で使われているCCA(コールドクランキングアンペアー)つまり、「冷寒時始動電流」で表す方法です。これは、-18度で30秒後の電圧が7.2Vとなるまで流すことの出来る電流のアンペア数のことです。CCA450Aとあれば450Aを30秒間流せる容量を持っているという意味です。
船舶の場合に当てはめると、エンジンがかかるとそのあとはオルタネーターの電力でまかなうわけですからスターターバッテリーの選択にはCCAを使う方が実際的、停泊中にラジオや漁探などに供給するサブバッテリーにはAhでディープサイクルバッテリーを選択するというのが理にかなっている訳です。
さて、バッテリーの充電と放電の原理については化学反応そのものなのでここでは省略しますが、なぜバッテリーに寿命があるのでしょうか?
その答えが、放電時に電極板の表面に発生する「サルフェーション」です。
サルフェーションとは非導電性の結晶物です。発生したばかりのサルフェーションはとても柔らかいので、ただちに充電することにより、サルフェーションは電解液に溶け込みます。したがって頻繁に充電放電を繰り返している状態ではサルフェーションはあまり影響を与えないはずです。
ところが、バッテリーを長期間放置して自己放電状態が続いたり、長期間使用しているうちに、サルフェーションが少しずつ硬化して充電しても電解液に戻らなくなり、電極板の表面に付着するようになります。
サルフェーションは絶縁物と同じですから、それが電極板を覆うことによって内部抵抗が増大してパワーが低下したり、容量が少なくなったりします。これが鉛バッテリーの寿命といわれる状態です。
バッテリーには「自己放電」というのがあります。バッテリーは電解液が入った状態では、何も繋がなくてもなく一日にバッテリーの容量の0.5〜1.0%が放電されてしまいます。これは、温度が高い程、また電解液の比重が高いほど多くなります。この自己放電によって通常のバッテリーで3ヶ月、自己放電が少ないメンテナンスフリーバッテリーでも6ヶ月位で電圧が下がりきってしまうようです。
したがって、バッテリーを常に満充電状態に保つことによってサルフェーションを防止して長くバッテリーを使うことが出来るわけです。
夏場は、自己放電も盛んですが一方船を使うことも多いので充電状態は良いのですが、冬には1ヶ月はおろか3ヶ月くらい船を動かさない方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで自己放電分を補い、満充電状態を保つ方法がトリクル充電です。これは30-50ミリアンペアの少ない電流を常時供給する方法です。
ちなみに100ボルトで使用する全自動充電器も、最初はアンペアアワーの1/10位の電流で充電しますが、充電完了後には通電を切ってしまうのではなくトリクル充電に切り替えています。 そういうわけで、このトリクル充電状態にするためにソーラーパネルを使用するというのが今回の目的です。
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