あれこれ修理 <My repair experience>

*電気が入らない「ウォッシュレット」

2015年5月:

ふと気がつくとトイレのTOTOウォッシュレットに電気が入っていないことに気がつきました。でもコンセントは入っている・・・そうか、漏電ブレーカーが切れたんだな、いやそうじゃない。ブレーカーをオンにしてもトイレはうんともすんともまったく電源が入りません。これはまるでリセットスイッチが切れたとかヒューズが飛んだような状況ですね。早速調べてみましょう。前回、開閉センサーの修理をしたのでカバーの外し方はわかっています。

テスターで電源プラグから順に100ボルトの電源をたどっていったら、すぐに原因が見つかりました。洗浄水タンクの上に設置されている温度ブレーカーが飛んでいます。プチッと指先でリセットボタンを押すと、はい、電源が入りました。これで修理完了?と思ったらコツコツ、シューシューという音がしてきました。なんだ?そのうちに音が変わってシュンシュンボコボコとなりました。ん?お湯が沸いてる音?そうなのです、お尻洗浄用の水が熱湯になりました。ヒーターが切れなくて100Vがかかりっぱなしなのです。そして過熱防止なのでしょう、先ほどの温度ブレーカーがカチンと落ちて全体の電源が切れました。なるほど、これか・・・ヒーターがオンになりっぱなしということは、水温センサーの不良か制御回路の不良かヒーターのオン/オフ素子(多分パワーMOS-FET)が内部ショートしたかですね。基板のコネクターを全部外して取り出し、詳細に調べてみましょう。
・・・と思ったのですが、なにしろトイレという水分が多いところで使うものですから基板は透明な樹脂を流し込んで完全にシールされています。テスターリードを端子に当てることもやりにくいですが、問題は樹脂が覆っているせいで、いくらICの不具合を発見してもハンダを融かして交換できないことです。なにしろ20年近い昔のモデルなので、基板をそっくり交換することなんてできるとは思えませんからね。となると、正常な水温センサーとヒーターを制御基板から切り離してしまって、それを使って別の回路で温度制御をするしかありませんね。制御回路はいずれゆっくり作るとして、とりあえず基板を元に戻しておきましょう。ヒーターの配線を外しておけば洗浄水は冷たいままですからお尻洗いはすすめられませんが、一応水は出ますし、その他の機能は全て正常に作動するわけです。


勝手知ったるトイレのカバーを外しました。

ヒーターに常時100Vがかかっています。

ここにある過熱防止の温度ブレーカーが働いて100Vを遮断していました。

水温センサーは表面に錆が浮いていますが、特性に異常はないようです。

基板には全体に7ミリくらいの厚さに樹脂が流しこまれています。どうにも手が出せません。

元のように組み立てて掃除をしておきます。

ヒーターの回路を切断しておきます。

とりあえずこうしておきましょう。

さて、水温センサーの抵抗値の変化を感知してヒーターをオンオフする回路を作りましょう。それにはオペアンプを使ったコンパレーターという回路を利用します。「コンパレーター」は「比較する機械」のことでして、ある値と比較してそれより高ければ0ボルト、低ければ5ボルトを出力します。中間はありません。一方、水温センサーは温度に応じて抵抗値が冷水の場合は50キロオーム、そしてぬるい温度で20キロオームと変化します。ですから、20キロオームを標準の値として、50キロオームのときは冷たいのですからヒーターに電気を流して温め、20キロオーム=ぬるま湯になったらヒーターの電気を切る回路が出来るわけです。
ヒーターの電源は100ボルトですが、これをオンオフするのには昔はリレーを使いましたが、今はソリッドステートリレーという小さな半導体のスイッチがありますのでこれを使います。コンパレーターの出力に応じて5Vでオン、0ボルトでオフと無音で接触不良もなくヒーターを制御してくれるのです。

基板を作るための部品はほとんど手元にあって、ソリッドステートリレーだけ秋葉原で購入してきました。では製作にかかりましょう。


ユニバーサル基板にパーツを配置して、ハンダ付けしながら配線を繋いでいきます。

電源をつないで動作テストです。

はい、ヒーターコントローラーの完成です。

この回路の構成です。フォトカプラーがコンパレーターの出力をソリッドステートリレーに伝えます。

6月26日:取り付け作業

ヒーターを制御する基板ができたので、これをウォッシュレットに取り付ける作業です
カバーを外して、自作した基板と水温センサーを接続します。ヒーターはまだ接続しません。基板の電源はウォッシュレットの制御基板でも5Vを使っていましたのでそれを拝借することにしました。

本体の電源を入れると、ヒーターの配線に100ボルトがあらわれました。ハイ、オーケー。次はヒーターを接続して水を温めます。1分ほどでヒーターが切れました。ぬるま湯が出来たのです。
あとはずっとこの繰り返しでぬるま湯が維持できるはずです。ちなみに制御回路の半固定抵抗を回すことで、ぬるま湯の温度を調整できます。温度は38度程度の冷たくもなく熱くもないくらいにしておきましょう。


自作基板とウォッシュレットをつなぐケーブル。白はヒーター、黒/灰は温度センサー、赤/黒は電源です。

さあ、作業再開です。

基板をつないでテストします。

電源と水温センサーだけをつないでテストします。

自作の基板はこの位置にビスで固定しました。

これでうまく行くはずです。さて、全体の作動テストをしてみましょう。

あとはカバーを戻す前に便座とふたを取り付けて作動テストをするだけです。うまく動くはずですが・・・・あれ?どうして?電源は入って便座などの開閉はするのですが、洗浄しようとするとノズルも出てこなければお湯も噴き出さないのです。う~ん、なぜだろう。
夕食の時間になったので、原因がわからないまま作業を中断しました。

6月27日:修理作業(続き)

朝から洗浄が始まらない原因を順に調べました。タンクの水量センサーはOKでしょう?便座とふたの位置センサーも働いているでしょう?人が座っているかどうかの着座センサーもチェックしたでしょう?ピッと受信音がするから、洗浄のコマンドは受けたけれど、まだ何かの条件が合わないから洗浄モードに移行しないという・・・そのため条件とはあと何があるのでしょう?
今回、制御基板から切り離したのはヒーターと温度センサーの二つですね。ですから水温センサーは制御基板ではなく自作の回路のほうにつながっています。つまり制御基板にとっては水温センサーは「断線」状態になっているわけです、もしかするとそれがまずいのかな?温度センサーの信号は別になくても、水が冷たくても熱くても洗浄する作動には関係ないんじゃないでしょうかね?いや、まてよ、仮に熱湯が噴き出したらお尻が大やけどですからね、噴き出す前に水温が適当かくらいはチェックしているかもしれませんよ。とはいっても水温センサーはひとつしかありませんから、ダミーとして22キロオームの抵抗を元の水温センサーの端子につないでみました。これで35度くらいの水温に相当するはずですから、水温は正常であるという偽情報を信じてくれるわけです。

さて、どうかな?水温チェックはだまされてくれるのか?
ふたを開けて便座は閉じて、着座センサーを塞いで「お尻洗浄」ボタンを押すと・・・・チョロチョロと水の音がしてグググとノズルが出てきました。そしてブシャー!やった、サランラップ越しに触れてみた水の温度もばっちりです。


水温センサーが繋がっていたコネクターの端子に代わりとなる抵抗を接続してみました。

ノズルが出てきて、水を噴出しています。右上の白いボトルは人間が座っている状態を作っています。

いやあ良かった・・・やっぱり水温センサーの存在はチェックしていたのですね。

今回も時間はだいぶかかりましたが、かかった費用は追加の基板作成費として500円くらいでした。20年を経てこれから先、いろいろな故障が出てくると思いますが、電子部品ならともかくモーターとか機械的な部品が必要になると修理できなくなる心配がありますね。

というわけでウォッシュレットの修理の物語その2も、これにて完結でございます。

<その後の物語>

8月の夏休みのことです。修理してから1か月半くらい後のことですが、洗浄水が冷たいことに気が付きました。別に作成した温度制御回路に不具合が発生したのか、それともヒーターが断線したのでしょうか?

さっそくカバーを外して調べてみると、オンオフ回路がショートして100ボルトが出っぱなし状態だったのが、今度は電圧が出ていません。素子が飛んでしまったのか、それともショートが直っちゃったのでしょうか?試しに水温センサーを元のようにつなぎ変えてみると、ヒーターに電源が入りしかもそのあと温度に応じて正常にオンオフするではありませんか。あれれ、直っちゃった。

この状態がいつまで続くのかわかりませんが、せっかく直ったのならオリジナル状態に戻していくことにします。とはいえ、また再発する可能性もありますので、どちらにでもできるように別基板はそのまま残しておくことにしました。


別基板は残しておいて、電源の取り出し方を変更しました。

正常に洗浄水を噴出しています。操作パネルの温度調節つまみも使用できます。

とはいえ、また再発する可能性もありますので、どちらにでもできるように別基板はそのまま残しておくことにしました。

 

9月4日

2週間して掃除のために電源を入れて置いたら、そのあといつの間にか電源が落ちていました。最初の時と同じ状態です。
またもやカバーを開けて例の温度ブレーカーを見ると案の定切れています。やはり直ったのは一時的なものだったのですね。センサーを別基板につなぎ変えてやりました。また、ダミーの抵抗を22キロオームから56キロオームに変更しておきました。これは水が冷たい状態ですから、仮に正常に戻ってもヒーターをオンにしようとして100Vが出続けるはずです。

そして、実は最初の修理の時に面倒でやっていなかった加工を今回実施しました。それは、ヒーターのオンオフ状態を表示する赤いLEDが基板の上についているのですが、この線を伸ばして外から見えるパネルにLEDを固定するという作業です。もともと表示パネルには「温水使用」をあらわす緑のLEDランプがありますので、ここにヒーターの状態を表示する赤いLEDを裏から持ってきたというわけです。


基板の上にあった赤いLEDを赤とグレーの線で延長して横に持ってきました。

LEDは表示パネルの「温水」の窓の裏に固定しました。

ヒーターがオンの時はこのLEDが赤く点灯します。

これで、ヒーターが正常に作動しているかどうかを外から判断することができるようになりました。

11月4日

電源を入れて30分くらいして様子を見たら、相変わらず赤いLEDが点灯したままです。試しに洗浄水を出してみると、冷たい水のままでした。これはどういうことでしょう?ヒーターが働いていません。

さっそく調査です。ヒーターの電圧を測ってみると11Vしかかかっていません。で、SSRに入る電圧を調べると100V近く出ていますので、これはSSRが壊れた?しかしSSRの許容電流は25Aもありますから、ちょっとやそっとでは壊れるはずがないんです。もう一度ヒーターの電圧を測ると今度は40V、なんか変ですね。
ふと思いついて、ヒーターの代わりにLEDの電気スタンドをつないでみました。最初はSSR単体で調べます。そうするとセンサーの温度変化に応じてちゃんとオンオフしますね。つまりSSRは壊れていません。しかし電源の元を基板のヒーター出力からとると、あらら、チカチカと点いたり消えたりハンチングしています。

なるほど、これはスイッチングの干渉ですね。オリジナルの基板のオンオフ制御もFET、追加した基板のほうもFETでどちらも位相制御なので波形がきれいにオンオフできないのでしょう。そうなると、FETではなくリレーでスイッチングしてやることにしましょう。基板を東京に持ち帰って作り直すことにします。


基板の上にあった赤いLEDを赤とグレーの線で延長して横に持ってきました。

 

12月4日

東京でSSRをリレーに取り換えた基板を取り付けます。ヒーターやセンサー、電源の配線をつなぎ、LEDを操作パネルの下に設置すれば終了です。

電源を入れてしばらく見ていたら数分でリレーがカチッと音を立ててオフになりました。そして洗浄水を出してみると、ちょっと熱めかな?わずかに半固定ボリウムを回して、カバーを戻して完了。


制御基板を取り付けて配線をつなぎます。

SSRがリレーに代わりました。

適温の洗浄水が噴出しています。

さあ、今度という今度は大丈夫でしょう。
結構長くかかりましたね。

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