あれこれ修理 <My repair experience>

*電源が入らない「ヤマハアンプの修理」

2014年9月:

今回はヤマハのステレオプリメインアンプの電源が入らないというトラブルで、友人が診て欲しいと持ち込んできたものです。フロントパネルの電源スイッチを押しても押している瞬間だけ電源が入って、指を離すとそのまま切れてしまいます。どうやら保護回路が働いている感じです。

早速トップカバーを外して電源回路を調べます。中央の放熱器の横、本体の左側に黒く四角い電源トランスが見えました。この周辺の回路を調べます。電源コードからヒューズ、スイッチを経由してトランスに100Vが供給されるわけですが・・・おや、変な基板がありますね。保護回路にしては構成が違います。サイリスタがあるようなのでこれは位相制御回路ですね。トランスの二次側も整流回路に使われていることはあっても、トランスの一時側に使うことはまずありません、すなおに100Vを一時側に入れるだけですからね。それなのにこのアンプでは、トランスに入る前に100Vを制御する回路が入っています。はぁ~ん、わかりました。パワーアンプは再生する楽曲のピークでうんと大きな電力を必要としますので、ハイパワーアンプでは強力な電源を用意します。ですがその電力を必要とするのはほんの一瞬で、98%はごくわずかの電力しか使っていません。短時間のピークのためにお金をかけて常時強力な電源を用意するのは無駄が多いので、普段は小さな電源を使っていてピークのときだけ5割増しの力を出させて乗り切れば良い、それだけ電源のコストが安くなるという考えです。

ただ、商用電源の100Vを150Vにするのは大変ですから、逆に普段は70Vくらいに下げた状態で使用しておいて、ピークのときだけ100Vに戻すようにするのです。それなら小さなトランスで済ますことが出来ます。このアンプにはそのための回路がトランスの前に置かれていたのですね。
では問題があるのはその回路か、それともトランスか?それを調べるために回路とトランスを切り離して調べてみます。制御回路のほうは正常なようです。一方、トランスは一時側の巻き線の抵抗がおかしいですね。どうやら中でショートしているようです。そこでトランスを取り外して手持ちのトランスで電源を供給してみると、アンプは正常に作動することがわかりました。

こうして、原因は電源トランスの内部ショートと判明しましたが、もうこのアンプの補修部品は販売されてはいないでしょう。要は適正な交流電圧だけ出れば良いのですから、汎用の電源トランスを使うほうが安く修理できるはずです。


修理で持ち込まれたアンプです。電源が入りません。

カバーを外しました。左上の黒い四角いのが電源トランスです。

ここに見慣れない基板が付いています。

一時側の電源電圧を制御しているようです。

トランスを分解してみると内部でショートしているとわかりました。

このアンプの本来のパワーは出ないとしても、普通に使うだけであれば市販の電源トランスとの交換で修理可能です。その費用はおよそ3000円くらいでしょう。依頼者にその旨を伝えたところ、意外にも修理打ち切りの連絡がありました。どうやらただで直るのなら直して欲しいけれども、お金がかかるのなら修理しないで捨ててしまうつもりのようです。最後まで有効に活用すれば良いような気もしますが、持ち主がそういうのでしたら仕方ありません。直す方法まで見つけたところで作業完了となりました。

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