* オーニング交換:2018年4-7月
トリニティのオーニングは2008年に新しく作ったものです。その後台風でビニール窓が飛んだので修理しましたが、10年使用したわけですのでそろそろ寿命です。表面のコーティングが固くなって剥がれ落ちたところには白いシリコンを塗りつけました。その上ファスナーの樹脂が紫外線で劣化して欠けてきています。

このオーニングはそろそろ寿命ですね・・・ |

表面にシリコンを塗ってごまかしてあるのです。 |

それが剥がれるのは時間の問題です。 |

裏側から見たところです。 |

紫外線劣化で樹脂の山が飛んでいます。 |
ですがこれ、作った時に12万円、修理で7万円かかっています。新しく作り直すとなると15万円くらいかかりそうですが、これって自分で作れないものでしょうか?帆布を縫うには家庭用のミシンではだめで、工業用ミシンがないと出来ないという話を聞きますが本当にそうでしょうか?ゆっくりやれば家庭用ミシンでも縫えたりしないのでしょうか?
帆布や金具、ファスナーなど必要な資材や部品はネットで買えることがわかりました。そしてデニムは家庭用のミシンでも、針を変えれば縫えるということもわかりました。デニムが縫えるのなら、帆布だって縫えるはずです。ここはひとつやってみましょうか?実はこんなこともあろうかと、近所のクリーニング屋さんが「差し上げます」と貼り紙をして店先に置いてあったミシンをもらって来てあるのです。普通の家庭用ミシンなのですが、これを使ってみようと思います。
3月19日 プロジェクト始動!
ハンドクラフトの店に行って太いデニム用のミシン針と糸を買ってきました。これで実験をしてみます。帆布の厚さは0.5ミリですから、それに近い厚さの布を何枚か重ねて縫ってみました。大丈夫ですね、これでちゃんと縫えそうです。

これがデニム用の糸と針です。 |

何とかなりそうです。 |
ではネットで材料をそろえるとしましょうか。
最初に布です。オーニング用の布というとアメリカ製のサンブレラが有名ですが、国産でも安くていいものはありそうです。あれこれ比較して、朝日加工のKTS735を選びました。色はパシフィックブルー、長さは高さ2メーターの3枚分で6メーターです。そして金具も新調します。ボタンとヒネリを10個ずつ、さらに窓用にはアキレスのスカイクリア0.5ミリ厚を50センチ注文しました。
3月24日 布が来た!
高知県のテント屋さんに注文した部材が到着しました。

ところが、ファスナーがありません。YKKのビスロン10号180センチなのですが、在庫がないというのです。ほかのマリンショップに問い合わせをしても在庫なしでした。さらに探した結果、大阪のファスナー屋さんにありました。しかも価格がテント屋やマリンショップの半額以下なのです。金具もこちらに注文したほうが安かったですね。あれやこれやで材料費の総額は3万円ちょっととなりました。ということは、約10万円くらいが手間賃というわけですね。これはやる気が出ますねえ。
残る問題は、縫製する糸です。ジーンズ用のポリエステル製の糸はあるのですが、耐UVの屋外用の糸は工業用ミシンに合わせたものしかないのです。さて、どうしよう?
4月25日 糸が来た!
ネットであれこれ探して、紫外線に強いという糸を見つけました。Dabond2000という糸の69番です。下の写真の左の白い糸がそうです。
耐候性のある糸としてはPTFE製の TENARA(テナーラ)という糸が一番いいとわかりましたが、PTFEとはテフロンのことであり摩擦が少ないので家庭用のミシンではうまくテンションをかけるのが難しいようです。
もう一種類、REPUV(リパーブ)もありますが、これは大一帆布オリジナルのUVカット+撥水加工ミシン糸でして性能的にはいいのですが小売りをしているところが見つかりませんでした。
今回買ったHeminway&BartlettのDabond2000シリーズは、
・丈夫で伸びにくい
・摩擦に強く、海水にも耐久性を発揮する
・太陽光(紫外線)に対する耐久性が高い
・カビが発生しにくい
・ミシン縫製の際に発生する摩擦熱に強く切れにくい
という特徴を持っていて、ゆうこうマリンが小売りをしています。320メーターで680円+送料+税でした。
隣の黒いのは試しに買ってみたジーンズ用の家庭用で縫える20番の一番太い糸で、右端は普通のミシン糸です。ただ、工業用はリールの大きさが全然違います。ミシンの糸かけは横ですし、リールの穴の大きさも全く違います。
ですが、工業用の糸を家庭用ミシンで使う方法があるのですね。家庭用のリールに巻きかえる?いえいえそんなことをしなくても、大きなリールを外において糸だけ上に引き出してやれば良いようです。ふむ、なるほどね。そうすれば、工業用は家庭用の10倍くらいの長さがあって、値段は倍程度ですからたくさん縫物をするお宅では工業用を買ったほうがずっと得なんですって。そしてこの糸を使うためにプラスチックのハンガーを流用してスタンドを作りました。こうすれば長いリールも使うことが出来ます。

白い糸が耐候性のある糸です。 |

プラハンガーを曲げてスタンドを作りました。 |

青い線でハンガーを切り、ガスで炙ってオレンジ色の線で曲げました。 |

ここに糸巻きが入ります。 |

一番長いポールを溶かして固定します。 |

こんな具合に外から糸だけを供給すればいいのです。 |
さあ、これで準備が整いました。ではいよいよ製作作業にかかるとしますか。
5月29日作業開始
まずは全長6メーターの布を3つに切ってファスナーを縫い付けますが、ファスナーの布がツルツルしているので布送りが一定に出来ず、ジグザグがうまく縫えません。2枚目は、先に直線縫いをしてからジグザグにしたらきれいに縫うことができました。
困ったのは窓の部分です。ビニールと布を合わせて縫おうとしたところ、布が送られません。ミシンのスキーのような足がビニールにくっついてしまうのです。それならばともう一枚布を重ねると、今度は送りはできるのですが、いくら待ち針で止めていても3枚がどんどんずれてしまいます。結局両面テープでビニールと布を張り合わせてから縫い付けることにしました。

オーニングを床に広げてしわを伸ばします。 |

切った布を合わせてファスナーを付けます。 |

布は3つに切りました。 |

ファスナーの布がツルツルなので滑ってジグザグが一定の間隔になっていません。 |

アイロンをかけたら溶けてしまいました。 |

必要な幅に裁断します。 |

窓の部分が難しい。結局ビニールを布でサンドイッチにすることで縫えるようになりました。 |

大まかな形に切り抜きました。はみ出ている縁は折り曲げて重ねます。。 |
7月4-6日 オーニング縫製
まずは端を折り返して2重に縫います。そのあとは窓開け、これもほつれ防止のために折り返しをすることにしました。
一番難しいのが3枚の布をチャックでつないで一枚にすることです。それが終わったら金具を取り付けます。オリジナルの位置に合わせてポンチで穴を開け、ボタンもしくはヒネリのアイレットを取り付けます。

端を折り返して二重に縫っていきます。なかなかまっすぐに縫うのは難しいものです。 |

ようやく左右と中央ができました。これをひとつにするのがさらに至難の業であります。 |

何とかつながったので、最後の作業の金具つけです。今付けているのがアイレット。 |

さて、金具の種類と向きが合っているかチェックします。 |
はあ、ようやくできました。材料を発注したのが3月末ですから三か月以上かかったわけです。やはりプロの領域に手を出してはいけないということを身に染みて理解したところであります。
7月8日 オーニング取り付け!
出来上がったオーニングを持って船に行ってきました。さてちゃんと止められるでしょうか?
あれれ?なぜか合わないところがあります。こりゃまずい、チャックを縫った時に幅を縮めてしまったようです。仕方がないので金具の位置をずらすことにします。

オーニングを取り付けてみたのですが・・・・微妙に合わないところがありました。 |
8月1日 オーニングの手直し
ようやく出来上がったオーニングを取り付けたのですが、止め金具の位置が合わないところがありました。いつまでもそのままというわけには行かないので、連日35度という猛暑の中、船に行ってきまいた。昼間は気温が上がるので、少しでも涼しいうちにと朝8時に家を出ました。しかも朝だとコクピットが日陰になるので楽なのです。
さて、金具の位置が合わないのは3か所です。
まずは上部中央の「ヒネリ」で固定するアイレットと左右のボタン(ホック)です。なぜかわからないのですが、全体的に3センチくらい左舷側にずれているのです。そして次は左舷の窓枠部分です。4つのボタンのうち、一番上はまあいいのですが、下の方が長さが足りなくて、無理に引っ張るとパツンパツンになってしまいます。そして一番問題なのが階段の上のところです。ちゃんと古いシートを下にして型を取ったのにどうしたことでしょう。いくら引っ張っても留めることができません。
さて、では上部中央から手直しと行きましょうか。なんといっても取り付けの基準となる場所ですから、ここを最初に直しておかないといけません。現物合わせで正しい位置をマークして、ポンチで穴を開け直します。アイレットは付け直し、ボタンは再使用できないのでニッパーでこじって外し、新しいボタンを加締めます。

オーニングを取り付けてみたのですが・・・・金具が合わないところが3か所もありました。 |

一番最初に取り付けるところなのに、3か所とも右にずれてしまっています。 |

左舷の窓枠です。下部の長さが足りません。 |

一番違うのがここ、5センチくらい足りません。 |

アイレットとボタンを付け直しました。これでまず中央がきっちり決まったわけです。 |
8月3日 オーニングの手直し(続き)
持ち帰ったオーニングは、折り返し部分の縫い目をほどいてアイロンをかけました。これでボタンやアイレットに必要な外寸を確保して、あとは別の布ではさんで補強をして縫い付ければいいのです。
さて、縫い付けが終わりました。あとは穴を開けて金具を取り付けるだけですが、ここでまた失敗をしてはいけないので、金具つけは現場でやることにします。
ということで、また朝8時に桟橋目指して出発しました。今日も暑いですねえ、すでに気温は30度を超えています。ではオーニングを取り付けてみましょう。おお、足りなかった寸法はちゃんと確保されています。金具の位置をマークして、ポンチで穴を開けて、金具を加締めて・・・・ハイ完了しました。

折り返してあった生地を伸ばしました。 |

上下から布ではさんで縫い付けます。 |

左舷の窓枠です。下部の長さが足りません。 |

4か所とも余裕で固定できました。 |

一番違うのがここ、5センチくらい足りません。 |

3か所とも無理なく固定できました。 |
さあ、これでオーニング関係の作業は終了です。いやあ、長かったですねえ。四国のテント屋さんに生地を発注したのが3月後半でしたから、4か月かかったことになります。まあ、エンジンのことがなかったらその半分くらいで出来たかもしれませんが・・・では費用をまとめてみましょうか。(端数切り上げ)
会社名
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内容
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金額
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(有)細木テント |
ボートカバー 6m |
14,300
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窓用ビニールシート 0.5x1.4m |
2,200
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金具類 ヒネリ10組、ホック10組 |
7,200
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送料 |
2,000
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クイックファスナー |
YKKビスロンファスナー 1.8m2本 |
1,600
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送料 |
360
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金具(追加) ホック15組 |
450
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送料 |
360
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ゆうこうマリン(株) |
ポリエステルミシン糸 |
600
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送料 |
900
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合計
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29,970
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ということで、材料費は3万円となりました。あちらこちらネットで探して分かったことですが、金具とファスナーの値段にずいぶん開きがありました。ですのでこれでも若干無駄使いをしたところがあります。ともあれ、今回やってみてわかったことは、ある程度ミシンに心得のある人ならば、作業場さえあれば家庭用ミシンでもオーニングの自作は可能である、ということです。あとは、この材料費とプロに頼んだ場合の差額をどう考えるか、ということになりますね。
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