2016年2月3日(水)第2日目
インド滞在2日目の朝です。
窓のカーテンを開けると眼下にニューデリーの街が広がりますが・・・・すぐ向かいのメリディアンホテルがぼうっとかすんでいます。これがPM2.5のレベルが世界一のスモッグですか。いまや北京を抜いて世界で一番大気汚染がひどいのはここ、デリーなのです。WHOが昨年発表した世界約1600都市の調査では、大気汚染と健康被害の原因となる微小粒子状物質(PM2.5)のニューデリーの年間平均値は、日本の基準の10倍を超える1立方メートルあたり153マイクログラムで、世界最悪でした。汚染の主な原因は、冬の間に周辺の農村部で広範囲に行われる野焼きの煙や、年々増える自動車の排ガスに加えて、調理や暖房などで使われる木材や固形燃料だそうです。汚染が原因でぜんそくや肺がん、心臓疾患などにかかった市民が年に1万〜3万人死亡しているというから驚きです。
さて、シャワーを浴びてテレビをつけてみましょう。どこかで英語のニュースをやっていると思うのですが・・・チャンネルを変えても変えてもインドの放送ばかりです。いったいどのくらいのチャンネルがあるのでしょう?なにしろインドには800もの言語があって主なものでも25種類はあるそうです。各言語のほかにも宗教専門の放送もあって、ざっとチャンネルを回してみても100局くらいはあるようです。
ところで、テレビにも出てきたようにインドというとターバンを巻いた人をイメージしますが、街中でも目立つのでたくさんいるように見えますが、ターバンを巻くのは「シーク教徒」だけです。そしてインド人の8割を占めるのがヒンズー教徒で、次がイスラム教徒で15%、そしてキリスト教徒が3%で問題のシーク教徒は2%に過ぎません。もうひとつ、インドというと仏教の発祥の地だと思うのですが、なんとインドの仏教徒はたった1%なんですね。
朝食を食べに1階におります。ちなみにインドは英国の影響で地上階は「ゼロ階」と表示されています。ビュッフェスタイルなので何があるのかひととおり料理を見て回ります。もちろんカレーもありますがハムはありませんね。ソーセージは豚ではなくチキンソーセージです。イスラム教への配慮なのでしょう。ヤキソバは良いですね、オムレツももらいましょう。ふむ、チキンソーセージってぼそぼそなんですね。オムレツは玉子の黄身が白っぽいせいかやけに味が薄いです。クロワッサンがあったのですが、これもパサパサでバターが効いていません。おっと、ピッチャーに水が汲んでありますが、これはミネラルウォーターかどうかわからないので飲まないでおきましょう。部屋に戻ればミネラルウォーターがありますからね。
窓から見たデリーの町並みです。これ、実は朝もやではなくスモッグなのです。 |
テレビのCMです。 |
典型的なインドの美女ですね。 |
宗教の番組のようです。 |
こちらはニュース番組。 |
ホテルの朝食のビュッフェ形式のレストラン。ネット画像を使いました。 |
朝食はヤキソバにオムレツ、チキンソーセージ、チャパティにパサパサなクロワッサン。 |
朝食を済ませたら、ホテルで両替をして出かけます。午前中はデリーの街をざっと見て回り、午後は地元の自動車部品メーカーを訪問する予定です。そのための移動手段として、コンシェルジェに頼んでタクシーを一日チャーターすることにしました。
最初にやってきたのはレッドフォートという、その名のとおり真っ赤な石で建てられたマハラジャのお城です。ムガール帝国の第5代皇帝シャー・ジャハーンが首都をアグラからデリーに移し、新首都における皇帝の居城として1639年から1648年の9年を費やして築かれたもので、世界遺産にも登録されているとのことです。
チケット売り場に行ってみると、「インド人=10ルピー(¥20)、外国人=250ルピー(¥500)」と書いてあるではありませんか。この差はなんなのでしょうね?チケットを買って進んでいくと、入り口では男性と女性に列が分かれています。なるほど、男性は金属探知機のゲートをくぐり、台の上に立ってボディチェックを受けます。同様に女性はハンドバッグの中を調べてテントの中でボディチェックを受けるのですね。ホテルにしてもインドのセキュリティは結構厳しいですね。まあ、パキスタンとの紛争が続いていますし、ここは首都ですから無理もないのでしょう。お城の中には機関銃を備えた防御壕がありましたし、前の広場には「クイックリアクション(対テロ即時対応)チームと書かれた車も止まっていました。
それにしてもやたらと野良犬がいますね。路上で寝ているのもいれば、その辺をうろついているのもいてざっと見渡すだけで10匹くらいはいます。中には狂犬病にかかっている犬がいる可能性があるということで、犬には近づかないようにしておきましょう。
信号待ちの車。バイクが多いですね。 |
ビンビン走り回るオートリキシャ。 |
そしてこちらが自転車で引くリキシャ。 |
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レッドフォート(赤い砦)と呼ばれるムガール帝国の皇帝の城です。横幅2.5kmですって! |
見学をする学生と一緒になりました。 |
インド人は10ルピーで外国人は250ルピー。 |
あちらこちらで野良犬が寝ています。 |
入り口は男女別でボディチェックをしています。 |
本当に赤い石で出来ています。 |
みやげ物店が並んでいます。 |
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英国の統治下は軍隊の駐留基地として使われたそうです。 |
場内の博物館です。 |
鎖で出来たよろいです。 |
昔の機関銃もありました。 |
城壁の上に上がる階段です。 |
警備兵の武器はライフルに機関銃です。やけに厳重ですね。 |
こちらには「対テロ即時対応チーム」の車が。 |
葉が白っぽいのはホコリのせいです。 |
レッドフォートがあるこのあたりは、デリー市内でも早期に開かれた地域です。
「デリーとニューデリーの関係がわからない」、「インドの首都はデリーじゃなくてニューデリーでしょ?」という方がいますが、実際はデリーとニューデリーは同じ街なのです。「デリー」という、どこの州にも属していない行政直轄区があり、そしてそのデリーの中にあるエリアのひとつが「ニューデリー」と呼ばれています。つまりデリーが東京都で、ニューデリーは千代田区もしくは永田町なのです。そして下町の台東区や墨田区に相当するのが特に「オールドデリー」と呼ばれるエリアです。
ヨーロッパでの都市では「旧市街」と呼ばれる地域がありますね、つまりは庶民の街なのですが・・・・・レッドフォートの前に広がるオールドデリーの中心街を見物してみることにしました。観光客がフラフラ歩くのは危険だしタクシーでは混雑に巻き込まれて進めないというので、2人ずつ2台のリキシャに分乗してチャンドニ・チョーク通りを往復してみることにしました。最初のうちは同僚と「ほら、ソニーの看板がある」とか「とてもこの道は自分では運転できませんね」などとキョロキョロしながら話していましたが、奥に行くにしたがってだんだん口数が少なくなりました。「聞きしに勝る」とはこのことです。混沌、猥雑・・・まさにカオスの世界です。今にも崩れそうな建物、廃墟のような商店、漫然とたむろする人々、ヒト、クルマ、オートリキシャ、リキシャ、自転車それに牛、荷車でごった返す道路・・・そして汚い、とにかく汚いゴミにまみれた街がそこにありました。
オールドデリーに入ってきました。街の雰囲気が変わりましたね。 |
道路のそこここにゴミが落ちています。右の女性は裸足で歩いていますね。 |
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右端の自転車は大量の荷物を積んでいます。 |
こちらでは牛が荷車を引いています。 |
前を行くリヤカーに積んであるのはプロパンガスのボンベです。道路はゴミだらけ。 |
リキシャも荷車も自転車も歩行者も自動車もみぃ〜んな一緒です。 |
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掃除じゃなくてゴミを道路に掃きだしている? |
道端に道具を並べた自転車修理屋さんです。 |
ここでチョット一休み。リキシャを降りました。 |
チャイ(紅茶)は1杯10ルピー(20円)。 |
ティーバッグに牛乳を注いだ甘い紅茶です。 |
それにしても誰も片付けないのでしょうかね。ゴミの収集はどうなっているの? |
これ、道路の中央分離帯です。 |
何をしているのかと思えば・・・ |
どうもここで寝泊りしているようです。 |
よくこんな環境で寝ていられますね。 |
リキシャに乗っていただけなのに、なんだかがっくりと疲れました。
タクシーに戻って次に向かったのがニューデリーのほう、インド門がある公園です。フランスの凱旋門のコピーと揶揄されますが、これは激戦を極めた第1次世界大戦の戦死者を弔うため、1929年に建てられたものです。高さ42mの門柱には、9万人におよぶ戦没者の名前が刻まれているとのこと。ここから西に伸びるラージパト通りは大統領官邸と結ばれており、毎年、共和国記念日の1月26日にはここで軍事パレードが行なわれるそうです。
ここには観光客が必ず立ち寄るスポットですから、記念写真を撮る写真屋、お菓子売り、腕輪売り、寄付の押し売りなどが何十人といて、タクシーから降りるとわらわらと集まってきますので油断がなりませんよ。「ノー、ノーサンキュー」を連発しながら断固としてすり抜けるのが一番です。同僚など、右側の売り子に対応して断っている隙に左の女性がジャケットの襟にインドの国旗をピンで留めて「何とかカンとか団体のために寄付を」とすがり付いてくるのですが、何しろ国旗ですからむしりとって捨てるわけにもいかず困っていました。結局100ルピーくらい渡して開放してもらったようです。
そのあとは昼食。デリーの南西部、空港の近くのバサントビハール地区にある「ゴールデンドラゴン」という中華レストランが美味しいという評判なので、メーカー訪問の途中、立ち寄ってもらいました。その店の名物が「ホイコースープ」。シャブシャブ鍋のように下に炭を入れて煙突が立っている鍋に白湯スープをいれ、鶏肉、野菜、春雨、パクチーが入っています。うん、確かに美味しいですね。ご馳走様。
ニューデリーの中心部、インディアゲートローンズにやってきました。 |
このインド門は高さ42m、第一時大戦で英国と戦ったインド兵の慰霊碑です。 |
門の下には慰霊の炎が燃えています。 |
向こうの奥に見えるのが大統領官邸です。 |
物売りの少女は12歳。名前をアルファベットで並べた腕輪を編んで50ルピーで売っています。 |
中華「ゴールデンドラゴン」の名物「ホイコースープ」です。 |
ホイコースープとチキンヤキソバにチャーハン。チキンヤキソバ、美味しいですよ〜 |
中華料理屋のお隣は仕立て屋さんでした。 |
なつかしい足踏みミシンが現役です。 |
さて、では再び待たせておいたタクシーに乗って移動します。住宅街を抜けて高速道路を目指します。ふうん、なるほど。住宅は個人宅もアパートも1棟ごとに高い塀で囲われています。そして門の前には小屋があって一人か二人の男がイスに座ってくつろいでいます。何をしているのだと思います?実はこの人たち、門番なのです。セキュリティの確保のために、ここではある程度の生活をする人々はそれぞれ門番を雇うのが普通なのですね。
車は高速道路8号線を通ってグルガーオンに向かいます。グルガーオンは空港のさらに南西にあって近年急速に発展した地域です。日本人の駐在員が多く住んでいると聞きましたが、日本と変わらないような近代的なショッピングモールや高層マンションがいくつもあって暮らしやすいということが理由だそうです。
グルガーオンの中ほどにある自動車部品メーカーA社の本社に到着しました。会議室でのプレゼンテーションや質疑応答のあと、工場を見せてもらいました。ここでは一部機械で加工したあとの組み立てを手作業で行っているのですが、サリー姿の女性がずらりと並んで作業をしているのはいかにもインド的でありました。
住宅は塀で区切られていて、各戸の前には1〜2名の門番が雇われています。 |
近代的なショッピングモールがあるかと思えば・・ |
隣には廃墟もあります。 |
道路端のジューススタンド。 |
食べ物やにタバコ屋もあります。 |
訪問先の工業団地です。 |
工場を見せていただきました。 |
サリー姿の女性工員が作業をしています。 |
ここの工程は全て手作業です。 |
道端のテントは靴屋さんでした。 |
州を越えると通行料を徴収するそうです。 |
デリー市営交通のバスはみなボコボコです。 |
帰りは渋滞のせいで時間がかかったのでずいぶん遅くなりました。お腹が空きましたね。外に出るのは億劫なので、昼に続いてまたホテルの中華レストランでディナーです。ビールでお疲れ様の乾杯をしたあとは、ラムコークを飲みます。インドではよく飲まれるお酒だそうですが、私にはちょっと甘すぎでしたね。夜のメニューにはちょっとリッチにロブスターの料理や白身魚の料理を加えて・・・はい、美味しかったですよ、ご馳走様。じゃあこのあとはバーで軽く1杯飲みますかね・・・・なんて話しながら店を出たとたんにニコニコとインド美人が話しかけてきました。
「お客様、屋上のスカイバーはもう行かれましたか?」
「いえ?スカイバーですか?知りません・・」
「ではこのあといかがでしょう?私がご案内しますから。」
なんということでしょう、ホテルの中でスタッフに客引きされるとは思いませんでしたねぇ〜でも、ちょうど良いタイミングだったので、4人でバーに案内してもらうことにしました。エレベーターで最上階の19階まで上ったあと、さらに屋外の階段を上がると・・・おお、広い屋上いっぱいに席が作られているではありませんか。気温は15度くらいで暑くも寒くもなく良い気候です。そして周りにはデリーの夜景が広がっています。飲み物は1杯が800ルピー(¥1600)と日本のホテルと変わらない値段でした。
酸辛スープが来ました。 |
飲み物はラム酒のコーラ割り。 |
ロブスターの炒めあんかけ料理です。 |
白身魚の蒸し物です。 |
チャーハンの米が長粒種でパラパラですよ。 |
屋上のバーにやってきました。 |
なかなかしゃれたバーではないですか。 |
カクテルなんぞ飲んでくつろぎます。 |
ニューデリーの夜景が広がります。 |
2月4日(木)第3日目に続く
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