2003年の6月に小型船舶の免許制度が変更されました。
簡単にいうと、今まで5級と4級の免許が入門用にありましたがこれが廃止されて、ジェットスキー専用の免許と2級免許で距離と船の大きさがそれぞれ沿岸から5海里かつ5トン未満の制限付きとなるのです。
そして旧制度で4級の免許保持者には2級への切り替え後自動的にジェットスキーの免許も付属するということで、改正前に駆け込みで4級免許を取得しようとする人が増えています。何を隠そう、私もその一人でありました。
別に今さらジェットスキーをやるわけではありませんが、たまたま会社の同僚が免許取得に動き始めたのでその後を追ったというのが正直なところです。
試験は学科と実技に分かれており、もちろん自分で勉強して直接試験を受けてもいいわけですが操船の練習もありますし、ここはどこかのボートクラブで実施している講習会に参加するのが早道です。
そこでインターネットで調べてみると、ボートメーカーでもあるヤマハが主催するもの、マリーナを持つ個々の会社が実施するものなど様々なものがあり値段も7万円くらいから10万円を超えるところまで大きな差があります。
結局私が選んだのは、江戸川区にある「マリーナリトルオーシャン」。免許取得までの金額も7万円と安い上に、スタッフの感じが良く親切で親しみがあるところが気に入りました。
場所は京葉道路の一之江橋のたもとで、最寄りの駅からは少し遠いですが自宅から自転車で行けないこともありません。
・講習会
まずは申し込み。
あらかじめホームページから申込書と身体検査票をプリントアウトし、写真や印鑑など必要なものを揃えます。
身体検査はどこの病院でも出来るとのことで、近所の行きつけの医院に電話して聞いてみると「検査料6000円に書類作成料が3000円、計9000円です。」だそうです。ところが先に同じところに申し込んだ同僚によると、「マリーナ・・の近所の広見医院というところで1500円でやってくれる」というではないですか!そこで書類を用意して朝9時にその広見医院に飛び込んで検査を受け、検査票に判を押してもらってその足で申し込みに。教本をもらって5月3日の講習を予約しました。
5月3日、9時半にマリーナリトルオーシャンで講習が始まりました。
2階の部屋で学科試験の「ここは出ます」というポイントをみっちり勉強。船長としての心得や安全上の注意などの一般常識から始まり、船の名称や構造、航海用計器、航路標識、海図の読み方とどんどん「らしく」なっていき、天気図の読み方、エンジン、電気、そして海上衝突予防法や海上交通安全法、港則法、船舶職員法、船舶法はては海難審判法や海洋汚染の防止に関する法律まで普段お目にかからない法規の勉強へと続きます。店長さんの説明もわかりやすく、お昼をはさんで夕方の5時近くまでかかりました。あとは自分で問題集を中心にテキストを繰り返し読んで自習です。
・学科試験
私の学科試験は5月13日と決まりました。
試験会場は東京テレポートセンターにあるタイム24というビルで午後1時からの受験です。
会場には400名近くの受験生が集まっていました。まず概要説明があって身体検査。とは言っても身体検査票を既に出しているのでその後に身体に重要な障害が出ていないかを確認するだけなので、名前を呼ばれたらイスから立って歩いていき受験票を差し出して判を押してもらうだけです。
そのあとは一旦休憩に入り、それから学科試験です。
カンニング防止のため列によって問題が変えられています。時間は90分ですが、30分経過したら退室していいことになっています。
幸い問題もほとんどわからないものはなく、念のために2回繰り返して答えを確認して約40分ほどで退室しました。
問題は持ち帰ることが出来ますので、自宅に帰ってから自己採点をしたことはいうまでもありません。見る限りでは間違えたところはなく、満点を取れたと思います。
結果は翌日の午前10時以降に試験機関のインターネットホームページで確認することが出来ます。
実技試験の日程も同時に発表されており、私は6月12日朝9時から江戸川区の妙見島で受けることになりました。
学科試験から一ヶ月も経って実技の試験とは、よほど受験希望者が集中しているものと思われます。
さて、試験の日程が決まったので実技の講習を受けなくてはなりません。
それは6月4日と決まりました。

・実技講習
同じく9時半にマリーナリトルオーシャンに集合です。
人数が多いので二つに分かれ、私を含む4人が始めにボートに乗ることになりました。
ライフジャケットを身につけ、17フィートの教習艇に乗り込むと直ぐに東京湾にむかって川を下ります。
まずは低速で交代でハンドルならぬ舵輪をにぎりますが、船首がふらふらして全然まっすぐに進みません。まっすぐ持っていても向きがずれていくのでそのたびに修正しなくてはなりません。次に速度を上げていくと船首が持ち上がり、更に速度が上がるとまた船首が下がってきます。これが「滑走状態」です。なにしろ試験にそなえての実習ですからすべて声を出して復唱しなければなりません。教官が「滑走しなさい」というと「はい、滑走します。前後左右よし!(クラッチを入れてスロットルを上げ)滑走しました。」という具合です。
次に東京湾に出てディズニーシーの沖合で舵を左右に切ったりUターンしたり、後進したり、落水者に見立てたブイを投げ込んで回収するなどの試験科目を順にこなします。落水者救助はこんな具合です。
教官がブイを投げ込んで「右舷に落水者!」というと
「右舷落水、機関中立右転舵」、
「落水者確認、救命ブイ投下願います。これより風下から救助に向かいます。前後左右よし」、
船を回してゆっくり近づき「救助の準備を願います。機関停止。救助をお願いします」
そしてブイを回収すると最後に「救助完了しました」
となるわけです。
その後は戻りながら3つのブイの間を蛇行して抜けたり、桟橋で係留方法や船体の点検、安全確認、消火設備の点検などを習い昼食。
午後は座学で、ロープの結び方、コンパスでの方位測定、実技試験中に試験管がする質問などを終えて、最後に又船に乗って接岸と離岸の練習をしました。
4人が交代で操船をするので結構時間がかかり、全部終わったのは5時近くになっていました。
さあ、これで実技試験にのぞむ準備は完了です!
・実技試験
6月12日、実技試験の日です。
朝からあいにくの雨模様ですが、地下鉄東西線で浦安駅で下車し徒歩で妙見島に向かいました。
2階の教室で注意や船の割り当ての説明を聞いた後いよいよ試験開始です。結構ドキドキする物だと思いました。
一回の試験で3名が同時に乗船しますが、私が一番受験番号が若いので最初に操船をやらされると聞いていましたが、まさにその通りになりました。まずは屋根の上の灯火を指して「これは何ですか?」で一瞬グっと詰まりましたが直ぐに思い出して「船尾灯です」・・後でよく考えたら違っていたかも知れませんがとにかく頭が真っ白状態。それからロープを渡されて「巻き結びをやってください」といわれ、次に「船体の点検」を命じられました。
その後他の人が救命設備や消防設備、エンジンの点検などを行いエンジンをかけてロープを解いていよいよ出港です。私が最初に操縦席に座ってゆっくり川下に向かい、その間に他の人は口頭試問を受けます。それが終わると私の操船試験開始。始めに「操縦設備の確認をしてください」と言われて思わずドキ!、そんなのあったっけ?とあわててしまいました。後で考えてみると初めての船の感覚をつかむために舵やスロットルを動かしてみることだったのですが、完全に試験と勘違いしてとにかくそれらしいことをやればいいだろうと考えてまず舵輪をぐるぐる回して元気に「ひっかり無し、舵異常なし!」と一声、後は順に計器を指さして「異常なし」とやってしまいました。
結果的にはこれは試験項目でないのでそれで良かったのですが、おかしかったのは後の人がみんな私の真似をしてしまったことです。このときはつくづく最初はやだなあと思いました。
そして3つのブイの間を通る「蛇行試験」をやり、ディズニーランドの沖に移動してから左右の転舵やUターン、落水者救助、後進をして操船の試験は一旦終了、次の人と交代です。
3人とも終わるとまたマリーナの近くに戻って着岸と離岸の試験。このときは私が最初ではなく2番目でしたが、やはり一回でも他の人のを見ておく方がやりやすいことは間違いありません。
そして船がマリーナに戻り、私は最初に係留のロープ結びをやっていますので、他の二人がロープをもって下船し係留、私が最後に下船して試験終了・・・・。いやあ、疲れました。のどが渇きました。
結局最後まで雨は晴れませんでしたが、土砂降りにもならず、風が強くなかっただけ良しとしなければなりません。
結果は一週間後の6月19日に発表されます。多分大丈夫だと思うのですが・・・。
・試験結果発表
6月19日、実技試験の結果発表の日です。
10時からの発表がホームページでなされるということで、一応大丈夫との自負はあるものの緊張しながら10時少し前からアクセスを開始しました。あれ、もう出てると思ってみると先週発表の分で、番号がはるかに若いのです。そうこうするうちにアクセスが出来なくなりました。これは前回の学科試験の時もそうでしたが、ページを入れ替えているところなわけですね。前回の経験でいうと10分くらいすれば画面がでるはずなのでそのまましばらく待ちました。10時10分まだ出ず、10時20分まだ出ず・・・普通ホームページのアップデートなら、これでもそうですが、オフラインであらかじめファイルを直しておいてFTPソフトで一気に入れ替えるのでせいぜい1-2分で終了するのではないでしょうか。そして10時30分になり40分過ぎでしたでしょうか、ようやく画面が出てきました。すぐにスクロールして自分の番号の辺りを見ます。ありました。そして一緒に同じ船で試験を受けた二人、私の次とその次の番号もあります。結局三人とも合格でした。多分同じボートクラブで講習を受けたメンバーですからともあれ皆さんおめでとうございます!
さて、あとは免許証の到着を待つだけです。
6月に入ってからの実技試験合格なので、新しい形式の免許証になるとのことですが、さて、どうなりますか?
・免許証受領
6月28日、リトルオーシャンに免許証が到着したというので受け取りに行きました。私の場合は合格したのが6月に入っていましたから、新免許制度になってからの形式で発行されました。すなわち従来の4級船舶ではなく2級で5トンの限定が付く、さらにジェットスキーの特殊免許が付属するというわけです。
また、以前のは紙に印刷して透明フィルムではさんだ縦長でしたが、今度のは運転免許証と同じサイズのプラスチックのカードに印刷されています。
さて、これで免許は手に入れましたので、本腰を入れて船を探さなくてはなりませんね。そして、免許の方も、例えば船の大きさは同じでも沿岸から5海里の制限がない1級にチャレンジしたいものです。例えば東京から大島まで行くにはわずかですが5海里を超えるので今の免許では行くことは出来ません。
どうせなら、せっかく覚えた学科の知識が無くならないうちのほうがいいわけです。というわけで、この項、まだ終わりではありませんよ!
今の免許は2級5トン限定です。
実際問題として、5トンというと30フィートクラスに相当しますからこれ以上大きい船を所有するということはまずあり得ません。が、距離の方はというと、5海里限定では身近な例では東京湾では十分ですが大島には距離が足らず(わずか400メートルだそうですが)行けません。一応そんなに遠くへ行くはずは無いと思いつつも、今の免許を取ってから1年以内ならば身体検査無し(ただし眼鏡等使用者は半年)で「ステップアップ」といって上級運航氈i航海計画、気象、荒天航法、海難防止)8問と(ディーゼルを中心とする機関の保守整備、故障時の対処)6問の学科試験だけで1級5トン限定免許に昇格する事が出来るのです。どうせなら冬のうちにステップアップを実現しておこうと思いながら、問題集やテキストのコピーを入手しましたが、やはり一人だとなかなか勉強は出来ません。
たまたま2月はシーズンオフで暇なのでしょう、リトルオーシャンが通常23000円のところを講習料と諸経費込み20000円でステップアップを受け付けるという話を聞きましたので早速申し込むことにしました。そうしたらなんとも幸運なことに、10月頃に再度免許制度が改定されて1級免許にあった重量の制限が廃止される見込みだというのです。つまり今1級の5トン限定であっても、改訂時にはただの1級と見なされて5トン以上の船も操縦できることになるのだそうです。聞いた話では、なんでもアメリカの圧力があって「日本でアメリカの大きなボートが売れないのは日本の免許制度のせいである。非関税障壁だ。」といわれたそうです。私はそれもさることながら、マリーナの係留環境が良くならない限り大きな船は少なくとも東京では維持できないとおもいますが・・。
まあ、そんな大きな船を金輪際買うことはないにしても、「1級免許」というだけでも持っておく価値がありそうです。
というわけで、講習は3月13日、試験日は16日と決定しました。
試験日
三角定規2枚とコンパスを使っての作図の練習と問題集による講習を終え、ついに試験日がやってきました。会場は千葉県市川市の勤労者福祉センターです。9時からということで8時半に着いてみたら、3階の会場に上がる階段もエレベーターも閉鎖されていて、皆1階のロビーや玄関外でうろうろしています。9時5分前になってようやく会場にはいることが出来、説明の後すぐに身体検査。視力と色覚の検査、それに「体に問題ないですね?」の一言で終了です。私は以前の検査結果が一年有効なので受ける必要は無かったのですが、聞けばこれで2000円なんだそうです。
いよいよ10時30分から学科試験開始。70分で14問の問題をこなします。まずは時間がかかる海図を後回しにして、天気図や台風避行、エンジンなどの設問を先にやり、それからゆっくり作図問題に取りかかりました。念のため全ての問題を2回見直したところで丁度時間終了。そのあと解答の発表があり、答え合わせをしてみたら、残念、一問だけ間違ってしまい全問正解を逃しましたが、まあ合格は合格です。これで安心。
発表
発表は一週間後の22日の午後1時半とのことです。試験実施機関であるインターネットのJMRAのサイトで合格を確認しました。
さあ、あとは今の海技免状を返納して新しい免状をもらうだけです。手続きに一週間くらいかかるとのこと、楽しみです。
免許受領!
さて4月10日、新しい海技免状が到着したとの連絡を受けて、リトルオーシャンに受領に行きました。
以前の免許状に較べてもほとんど変わらず、唯一較べてみてわかる違いは「1級」の背景が濃い水色になったこと位でしょうか。
あとはこのまま暖めておけば秋にはきっと良いことがアリそうです。期待しましょう。
もし大幅な変更がった時には、このコラムで発表させていただきます。
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